出版社を経営しながら日本でのAI普及の最先端に立って活躍中のタニケイさんこと谷口恵子さんにインタビューしていただきました。英語が話せなかった私の新卒時代から、どうして英語のビジネスコミュニケーションを教えるようになったのか?石橋を叩かずに飛び越えてきた波乱万丈の半生をお届けします。タニケイさん、貴重な機会をいただきありがとうございました。
Q. 最初のキャリアはどのような仕事でしたか?なぜその仕事を選んだのですか?
日本のスーパーマーケットチェーンの(株)西友で人事部教育担当に配属されました。
本当は西武百貨店と合同の「西武流通グループ 広報室」に入りたかったのでガッカリしました。人事部に居たので、自分が採用されたときの記録を見せてもらったら、ひとこと「教育担当!」と書いてあったので、採用担当者の目を信じてやってみることにしました。
Q. そこから外資系企業に転職するまでの経緯は?
入社2年目の秋に結婚したら仕事を外されて未来が見えなくなったこと。人事に居たので、会社全体が見渡せて、ごく一部の仕事でしか女性にキャリアの門戸が開かれていないことを知ったこと。
そして4年目に離婚したら当時のお給料では一人で食べていけないことが分かりました。これからの国際化を期待して(今ではグローバル化と言いいすね)、英語を身に付ければ食べていける!と考え、英語学校の職員に応募して受かりました。倍率25人のところを受かったのは今思うと奇跡です。
Q. 外資系企業で使える英語力をどのように身に付けたのですか?
毎日、聞いたこと、話したいことをひとつひとつ調べて使いました。また英語圏の人や英語が堪能な上司の話を聞いていて、すてきな言い回し、便利な言い回しをマネしました。覚えられない単語は付箋に書いて机上のパソコンのモニターに覚えるまで貼っておいて朝晩口に出して練習しました。
基本、頼まれた仕事はデキそうになくても断らずに引き受け、当日までにできるように練習するようにしていました。初めてのプレゼンは英語で役員会プレゼン。日本語でもプレゼンをしたことがなかったけれど挑戦しました。無茶な話ですね。でも質疑応答だけ部長にお願いして、提案が通りました。
Q. 38歳でイギリスへの留学をされたのはなぜですか?
360度評価が導入されて実施後のフォローがうまく行かず、ある事業部の人間関係がぎすぎすしてしまったのを目の当たりにしたからです。専門知識がない人間が人事に触ってはいけないと強く感じて、人事の運営を包括的に学ぼうと思いました。
最初は国内の大学院を探しましたが当時は人事についての学問がまだなくて、海外の大学院に詳しい友人に頼んで資料を取り寄せたところロンドン大学の心理学部に探していたコースがありました。
即、夏休みを取って、ここならよさそうという大学の現地に行き、夏休み中の事務室に直接入って行って「来年応募するので応募書類をください」とお願いして、一式もらって日本に戻りました。
自分も実家の親も元気なこのタイミングを逃したくないと思い、住宅ローンも払いながら渡英しました。お金がないので学生寮で5人でフラットシェアをしたのは他国の人たちと暮らした良い思い出です。
Q. 留学はその後の仕事にどう生かされましたか?
帰国して半年ほど職探しをしていた時、偶然あるヘッドハンターの方と知り合い、アメリカの最大手製薬企業の非公開求人を紹介されました。当時のカナダ人社長は当時の社内の仕組みが旧態然とした日本式であったために、海外の最先端の人事諸制度を導入することを考えていたので、私がロンドンで学んできたことを提案すると、ことごとく支持してくださって、たくさんの新規プロジェクトを担当することが出来ました。
中途採用面接、新卒面接のアドバイザー、社内公募、管理職昇格審査プロセスの刷新、オンラインでの360度評価、コンピテンシーモデル内製化(コンピテンシーの概念を広める担当)。英語での役員会プレゼンを2か月に一度くらいの頻度で経験してスキル磨くことが出来ました。今では私のコアコンテンツになっています。
Q. 2014年に独立した経緯、理由は?
国籍企業で仕事をするうちにM&Aの結果、一つのポジションに2人の人が居ると、そのうち一人は余剰と見なされて退職していきます。その多くが仕事はできるのに英語のコミュニケーションが苦手で活躍の場を失う人。経営陣の目に留まらず評価もされません。
また社内だけでなく、日本全体を考えても優秀な人が他国とのプロジェクトで英語力、マインドセットの弱さのために要職に付けず、評価もされていないのを何とかしたいと起業しました。
Q. 今は具体的にどのような仕事をしていますか?
TOEICテストの点数がある程度高くなって、外資系企業に転職できたり、海外担当に異動してみたものの、オンライン会議で何もできないとお困りの方の英語の使い方の指導をしています。そういう人がにわかに増えました。
Q. どんな思いで今の仕事に取り組んでいますか?
私もテストの点は高いのに話せない、聞き取れない経験をしています。英語に不自由を感じなくなるのに20年掛かりました。若い人たちにはそれほどの時間を掛けることなく、最短で英語力を伸ばして少しでも早く海外とのビジネスで成果を上げられるようになって欲しいと思っています。
Q. 特にどんな人をサポートしたいですか?
日本語での仕事で優秀なのに、英語での実務で英語とマインドセットがボトルネックになって活躍できていない人。日本の社会をよくしたいという志のある人。
Q. ちょっと疲れたときの回復方法は?
ウチにはももこさんという4歳半のセキセイインコさんがいるんです。ももこさんと遊ぶ、スーパー銭湯に行く、映画を見る。最近、面白い映画が多いですね。それから時間が取れるときは旅行に行く。パンデミックが収まったら思い出の詰まったロンドンをぶらぶら歩きしたいです。
Q. 今後チャレンジしたいことはありますか?
遅ればせながらなんですが、YouTubeチャンネルを通して英語初心者から上級者までのたくさんの人に仕事に役立つ実用的なコンテンツを広めたいです。
また、管理職層に英語のコミュニケーションスキルのワークショップをたくさん実施したいです。
Q. 座右の銘は?
やらずに後悔するよりやって後悔するほうがいい。
前例がなければ be the first case!
Q. 動画を見てくださる方へのメッセージ
新しいことを始めるのはいくつになってからでも遅くありません。失敗を恐れずに始めましょう。一歩踏み出せば一歩分、前進できます。朝起きた時より寝るときに少しでも前に進んでいることを喜びましょう。
その際、英語が使えると活動の幅が広がるし、受け取れるものも日本語だけの時より大きいです。英語と英語のマインドセットは人生を変えます。