ビジネスで役立つ英語のクッション言葉:依頼・お断り・反論を柔らかく伝えて仕事をスムーズに進める方法

1.クッション言葉とは

クッション言葉とは、そのまま伝えてしまうと相手にとってきつい印象や不快感を与える恐れがあることを、やわらかく伝えるために前置きとして添える言葉を指します。

クッション言葉は、ビジネス枕詞(まくらことば)とも呼ばれ、本題を伝える前に相手を気遣う気持ちや敬うニュアンスを添える働きがあります。
そのためコミュニケーションをスムーズにし、仕事を円滑に進めるためにさまざまなビジネスの場面で使われています。

ビジネスにおいては、相手が忙しいときに作業をお願いしたり、相手からの依頼を断ったりと、伝えにくいことを伝えなければいけないこともあるでしょう。
そのような場面にクッション言葉を使うと相手も心の準備ができます。
いきなり本題を切り出して相手に唐突感や失礼な印象を与えずに本題を伝えることができると、こちらの要求が受け入れられやすくなるという効果もあります。

仕事をするのに不可欠な良い人間関係を築くためにもクッション言葉は欠かせません。

2.クッション言葉が役立つ場面と具体例

1)依頼するとき

上司や同僚、取引先や顧客になにかを依頼するとき、相手が多忙である可能性や、依頼する作業に手がかかり面倒に思われる可能性もあるでしょう。
そういった場面では、依頼したいことを伝える前に「お忙しい中恐れ入りますが」「お手数をおかけしますが」などのクッション言葉を使うとよいでしょう。

依頼を受ける側を不快にさせず、相手の状況を慮っていることを伝えられます。

<依頼するときに使えるクッション言葉>

「ご面倒でなければ、…していただけますか?」
“If it’s not too much trouble, could you…?”

「お時間がある時に、…を見ていただけますか?」
“When you have a moment, could you take a look at…?”

さらにことのときどうしても時間に締切りがある場合は理由を添えて期限を伝えると良いでしょう。

「もし5時までにお願いできると大変助かります。~さんに送らなければならないのです」」
“It would be a great help if you could do so by five o’clock since I need to send it to ~”

「…していただくことは可能でしょうか?」
“Would it be possible for you to…?”

この表現は、You,あなたと I, 私という人間が出て来ず依頼事項が可能かどうかだけ聞いているのでより客観性が高く、切り出しやすいことでしょう。

2)断るとき

顧客や上司からの依頼や招待を断るときは、相手の気分を害さないか、今後の関係が気まずくならないか心配になることもあるでしょう。
英語の文化ではお断りをする際に、まずお礼から始めると相手の心が和むのでうまくいきやすいです。

また、表現は穏やかながらも「お断り」というメッセージははっきり伝えます。
日本語の時のように「前向きに検討します」「持ち帰って社内で検討します」という婉曲な断り方は、相手を待たせてからがっかりさせることになるので却って関係が気まずくなりがちなので避けたいものです。

例えば:

アメリカのプロジェクトメンバーたちがクリスマス明けに日本の顧客を訪問したいと伝えてきたとしましょう。
日本側にしてみれば年末年始の忙しい時期ですし、その直後は家族と過ごす休暇時期でもありますので断りたいものです。
そんな時にはこんな風にお礼から始めます。

<お断りをお礼から始める例>

「日本の顧客のことを考えてくださってありがとうございます」
“Thank you for considering Japanese clients.”

「あいにく、その時期は日本では正月休みで私たちのオフィスも顧客のオフィスもクローズしています。」
“Unfortunately, both our office and our clients’ offices are closed during that period due to the New Year holiday.”

このようにクッション言葉を使って、断ることを心苦しく思っていることや、招待してくれた相手の気持ちをありがたく思っていることを伝えながらも、続いてきっぱりとお断りの意思表示をします。

<断るときに使えるクッション言葉>

「申しあげにくいのですが、…することができません。」
“I’m afraid I won’t be able to…”

ここで”I can’t”という表現を使うと、やや感情のこもったニュアンスになってしまうので、代わりに be unable to を使って「事情があって客観的に不可能」だということ伝えます。

「残念ながら、…はお断りしなければなりません。」
“Unfortunately, I have to decline…”

「気持ちはあるのですが、…できません。」
 “I wish if I could, but I’m unable to…”

3)反論するとき

ビジネスにおいては相手の意見に反論しなければいけない場面もあります。
特に取引先や上司が相手だと、反論することにより相手の心証を損ねないか不安な場合もあるでしょう。

そのようなときは相手を否定していると誤解されることを避けるため、一度相手の主張を受け止めてから、相手でなく意見に焦点を当ててクッション言葉を添えながら反対、あるいは自分の意見を伝えると、相手にもこちらの意見を聞く心のゆとりができます。


<反論するときに使えるクッション言葉


「おっしゃることは理解していますが、…かどうか疑問に思います。」
“I understand your point, (but) I wonder if…”

ここで私が(but)とかっこ書きにしたのはbutを省いてもほかの視点を持っていることが伝わるのと、butがないほうが相手にとっての抵抗感が下げられるからです。
猛反対でなければ省いてみてはいかがでしょうか。

「ごもっともな意見ですが、…について考えたことはありますか?」
“That’s a valid point. (However,) Have you considered…?”

この例文でも but の時と同様、常識的には逆接の接続詞をいれたくなりますが、そこをするっと省略してもこちらが異なる意見を持っていることは充分伝わります。

「おっしゃることは分かりますが、私は…と思います。」
“I see where you’re coming from, but(→ and) I believe…”

ここも私の個人的な話術ですが、butでなく、「そして私は」と反対感をあまり出さずに自分の意見をスルリと展開するというやや高度なテクニックもあります。

3.クッション言葉を使うときに気を付けたいこと

依頼、断る、反論と言った場面で相手が受けるかもしれないショックを和らげ、人間関係を損なうこリスクを抑えることができるクッション言葉ですが気を付けたいことがあります。
それは、相手が自分に対して質問をして答えを今か今かと待っているとき、そして多忙で時間を惜しんでいる様子が分かるときです。

そのような場合はクッション言葉の中でも比較的シンプルで短いものを選ぶとよいでしょう。
またせっかちな人に対しても長々と丁寧な言い回しより、短くても耳に心地よい決まり文句があります。

依頼する場面なら: 
「ちょっとお願いしてもいいですか?」
Could you do me a favor?

単刀直入な表現ですが、あなたを見込んでおねがいしたいという可愛らしさが感じられます。


急ぎの用事を断る場面なら:
「ごめんなさい、今手がいっぱいで」
I’m sorry. I’m tied up right now.

この時は「もうしわけない」という表情も見せたほうが良いでしょう。



反対意見を伝える場面なら:
「興味深いですね。私は少し違う見方をしています」
That’s interesting. I have a slightly different point of view.

4.まとめ

とかく、フレンドリーでストレートなイメージのある英語ですが、やはり人間通しのやり取りであれば相手の感情に配慮した言葉を選びたいものです。
また英語圏の国でも、文化的に直接的な言い方を好まない国もあります。個人的な感想ですが、イギリス人同僚たちとのやり取りはアメリカ人とのやり取りより相手の表情に注意を払いながらお願い事をしたり、お断りしたり、反対意見を言っていたような気がします。

英語にも Save face (顔を立てる)と言う表現があります。また英語には “tact”(機転)や “diplomacy”(外交的な態度)という概念があり、相手を傷つけないようにしたり、関係を円滑に保つための言葉遣いが大切にされています。
ストレートな表現が好まれる場面もありますが、特に対人関係やビジネスシーンでは、柔らかい表現や婉曲的な言い回しが出来ることはあなたのビジネスパーソンとしての成熟度として評価されることでしょう。

この記事を書いた人

仕事の英語パーソナルトレーナー
河野 木綿子(こうの ゆうこ)

ロンドン大学 Goldsmiths College 2000年
心理学部 大学院卒業
東京都青梅市出身

スピーキング初心者歓迎!
TOEICテストでおおむね600点代~800点代で英語が話せない人が、英語で仕事ができるようになるお手伝いをしています。

ひとりでも多くの日本人ビジネスパーソンが英語でも日本語の時と同じように活躍できるようになって欲しいです。

25年間大手外資系企業の人事部に勤めた人材開発の専門家。その経験とロンドン大学大学院で学んだ学習理論と効果測定を活かし、日本で第1号となる仕事の英語パーソナルトレーナーを2014年に開業しました。
著名人含む約90名を、仕事の英語デビューに導いてきた実績があります。

【保有資格】
・ケンブリッジ英検
・IELTS 7.5 (1998)
・英国心理学協会の能力・適性テストの実施資格※
※企業で面接、適性検査、能力検査を実施する資格

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【著書】
『仕事の英語 いますぐ話すためのアクション123』
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